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世界まんこ名画劇場 ~一世風靡したポルノ女優が反ポルノ活動家になった驚愕の真実とは? 女性にこそ観てほしい映画『ラブレース』~

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以前、しゃべるまんこのポルノ映画『プッシー・トーク』(1975年フランス)についてご紹介させていただきましたが、
まさしく同時期にもう1本、アメリカで大ヒットしたポルノ映画があったことを知人が教えてくれました。
ディープ・スロート』
いまではTENGAの製品名として有名なこのタイトルからもご想像がつくように、咽元にクリトリスがあったことがわかった不感症の主婦が超絶フェラチオに目覚めるという実にアホなストーリー。

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『ディ-プ・スロート』は現在のAVではごく当たり前の主演女優のフェラチオ技巧が当時は画期的だったためか、ポルノ映画史上最高の興行成績を収めたそうです。
アメリカのポルノ界では豊胸手術をした金髪美女が主流の中、その辺にいそうな普通の女性が主演女優を務めたのも斬新だったようですが、
わたしに『プッシートーク』ほど興味が湧かず、盟友・野ざらしマリーがたまたまくれた1枚のある映画の試写会ハガキを手にするまで忘れかけておりました。
しかし、この映画の主人公こそ女であるわたしが知らなくてはならない人物だったのです。

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リンダ・ラブレースは『ディープ・スロート』で一世風靡したポルノ女優。(1949年~2002年没)
リンダがポルノ活動をしていたのは『ディープ・スロート』制作期間のたった17日のみでした。
実はリンダはポルノには仕方ない理由で出演させられ、その後、反ポルノ活動家に転向したのですが、その逸話を映画化したのが、今回ご紹介する『ラブレース』です。

リンダを演じるのは『レ・ミゼラブル』で清純なコゼット役を演じたことでも印象深いアマンダ・セイフライド。
リンダ(アマンダ)のキュートで親しみやすい笑顔のカバーからも伝わるように、『ディープ・スロート』に出演する前のリンダは、ごくごく普通の女の子です。
冒頭、自宅の庭で日光浴中に女友達からビキニの紐を外されただけで恥ずかしがるリンダ。厳格なカトリック教徒の両親には門限を厳しく決められ、夜遊びも自由にならない毎日。
本当に、なぜこんな普通の女の子がポルノ女優に!?
そう、リンダは出会ってはならない男に会ってしまったのです。
バーでナンパされて付き合い、そのまま結婚した男・チャック・トレイナー。
一見魅力的なこの男に関わらなければ、リンダの人生は全く違っていたでしょう。

遊び慣れていたチャックはうぶなリンダにフェラテクを仕込みました。
そのテクニックがどれだけ凄かったかは、主演のリンダの容姿が平凡で演技下手にも関わらず、映画が大ヒットしたことからも伺えます。
咽にクリトリスがあった。
というアホ~な設定も、なんだか全てがほっこり笑えてユーモラスなサクセスストーリーに思えてきますが、本当のリンダの生活は悲惨でした。
チャックは暴力でリンダを支配し、自らの借金返済のために『ディープ・スロート』に妻を無理矢理出演させたのです。
低予算で、たった数日で撮影されたこの映画が大ヒットし、ポルノスターとして有名になったリンダは幸せになるどころか、映画出演のギャラもチャックに搾取され、その後もチャックに支配され続けます。
映画の前半ではリンダが有名になるまでの楽しげな世界が描かれますが、後半ではチャックと離婚した6年後に時は流れ、栄光の裏でチャックのDVに苦しんでいた不幸な事実が明らかになっていきます。

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リンダを暴力で支配するチャックはほんとーに、クソです。
最近もある外国人野球選手が妻や子に暴力をふるい裁判になったことについて謝罪会見をしていましたが、どちらかといえば野球選手に同情的だった報道に日本人のDV男への甘さが透けて見え、憤りを覚えました。女に暴力をふるう男は死ねばいいと思います。
しかし、この映画でわたしがもっとショックだったのは、リンダと彼女の母親の関係でした。
結婚生活に耐え切れなくなったリンダが夜中に実家に助けを求めに行ったシーンにはゾッとしました。
ズタボロのリンダが「チャックから逃げたい。1日でもいいからここに泊めて!」と泣きながらお願いしても、母・ドロシーは冷たくリンダを追い返すのです。
リンダの両親は厳格なカトリック教徒。カトリックでは離婚は禁じられているから、といっても娘が夫から暴力を受けていたら救おうとするのが親心では!?
それにドロシーも実は若いころリンダのようなダメンズに出会い、望まない妊娠出産をしているようです。同じ不幸を味わったなら尚、リンダの味方であるはずなのに!?
ですが……考えると、リンダほど不幸ではないわたしも、このシーンには既視感がありました。
なにかおかしいよ、と言うたびに、母親には口癖のように呪いをかけられてきたのです。

(次ページへ続く)

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ろくでなし子

漫画家。日本性器のアート協会会員。自らの女性器を型どりデコレーションした立体作品「デコまん」造形作家。著書に『デコまん』(ぶんか社刊)。『女子校あるある』(彩図社刊)

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