カルチャー

グレーゾーンに未来はあるか 性風俗と芸能の境界線上で揺れるストリップ

【この記事のキーワード】
グレーゾーンに未来はあるか 性風俗と芸能の境界線上で揺れるストリップ の画像1

坂田哲彦『昭和ストリップ紀行』(ポット出版/2010年)には、在りし日の黄金劇場の姿が記録されている。表紙は今は亡き静岡のピンク座。

【第一回】現代ストリップは多彩なボディーパフォーマンスの場に 女性たちが憧れるストリップの多様性
【第二回】「ストリップ劇場は女子校みたい」「男の人も踊り子になりたい」劇場は多様なエロとの向き合い方を肯定する場所
【第三回】ストリップ劇場に女性客が増えている理由を探る~憧れと尊敬、客席の信頼関係

劇場は、街の人々の居場所だった

「劇場の扉を開けたら、踊り子さんと糸を持ったお客さんが舞台の上に乗ってて。『え?』と思ったらその踊り子さんが『お食べ』ってリンゴをくれたんだよね。一通り観て、それが花電車で切ったものだってわかったんだけど」

 30代女性のWさんが話してくれた、まるで昔話の一場面のようなエピソード。かつて横浜に存在した黄金劇場での一幕だ。

 「花電車」とは、局部を使って吹き矢を飛ばしたり、筆で習字をしたり、ラッパを鳴らしたりする芸だ。その日のストリッパーは、局部に糸を入れてその端を客に持たせ、リンゴを切るという芸を持っていたという。

「そのリンゴ、包丁よりきれいにむけてたんだよ。あれは同性として尊敬しかないよ……」

 元ストリッパーの女性支配人が運営していた黄金劇場は、数あるストリップ劇場の中でもとりわけ地域の人に愛されていた場所だったと聞く。

 舞台が壊れたら常連客が競馬で当てた数百万を寄付して改修してくれた。一見さんには常連がポラロイドをおごってくれた。その日の演者の旦那が子ども連れで訪れ、ショーの終了後にお客も交えて談笑していた。上演前の舞台の上でカラオケを歌う老人がいた。年配のストリッパーが客におっぱいをさわらせながら、「最近来なかったじゃない」「病気しちゃってさあ」「あたしも今度膝の手術するのよ」と会話していたなどなど、のどかなエピソードには事欠かない。

 そこでは、ストリップ劇場は性風俗の現場であり、ダンスショーや芸を見る場でもあり、街の人々にとっての居場所でもあった。

 しかし、黄金劇場は2012年2月にわいせつ物陳列罪。同年6月には労働基準法違反(強制労働の禁止)によって閉館。同年9月に一時的に再開するが、11月に8か月の営業停止処分を言い渡され、翌年には廃業に至った。

 街の交流場所として愛されてきた劇場が、最後はストリッパーへのギャラ未払いを明かされ、完全に廃業したという事実は何とも言い難いものがある。

 だが在りし日の黄金劇場の様相や、その終わり方は、「ストリップの今と未来」についての様々な示唆を与えてくれる。

グレーゾーンに未来はあるか 性風俗と芸能の境界線上で揺れるストリップ の画像2

黄金劇場跡地は現在、シェアオフィス形式の工房として使われている

1 2 3 4