乙女になる白雪魔夢子(33)
大阪に到着したのは17時過ぎ。しかし、改札を降りたところにT氏らしき人はいませんでした。
え、なんでいないの……。
高鳴る心臓……。うう……心臓が不安でつぶれそう……。
だって、出会い系って、遠目から相手を確認して、「ブスじゃねえか」って思われたら声もかけられずに帰られるっていうじゃん……。
白雪は待合スペースの椅子に座り、腰を曲げ、祈りのポーズでずっと待っていました。
頭の中では、「わたしのメイクがケバすぎたのか??」とそればかり考えていました。
たしかに飛行機に乗る前にフルメイクのうえから粉をはたき、飛行機降りて速攻でトイレに入って口紅を塗りなおしました……。きっといま、わたしの顔は福笑いのお面みたいになってると思う……。
「ごめん、ターミナル間違えた! ついたよ!」
そのLINEが入ったのは、飛行場の待合室で彼を待って、20分ほど経過した時でした。
顔を上げると、遠目に背の高い彼の姿が……!!
180㎝の童顔イケメンの姿があ!!!(大事なことなので2度言いました)
もう待たされたことなど頭からふっとび、「お腹空いてる?」などの彼の質問にドリンキングバードのようにこくこくと頷き、気づけば複合施設の中の回転ずし屋に入っていました。
目の前の彼はスカイプで話していたときよりも、顔が小さく、「俺の好きなハイヒール履いてきてくれたんだね」と言ってくれました。
彼がスカイプでピンヒールが好きといっていたので、買ったのです。靴擦れで歩くたびに足のかかとをめった刺しに刺されているような痛さでしたが、その一言でもう全然平気に。
ふだん余裕で10皿は食べるところも、3皿で「お腹いっぱい……」と白雪は肩をすくめて微笑みました。
女優や!! わいはいま、女優なんや!! 彼が抱きたいと思う女を演じ続けるんや!!
そう心の中で鼓舞し続けていたのです。