カルチャー

セックスワークとアートは手を繋いでいけるのか『Have a nice day! Sex worker』

【この記事のキーワード】

げいまさきまきさん。胸のペイントは傘

 カウパー団なる劇団(パフォーマンスユニット)で関西を拠点に活動している“げいまきまき”という人がいる。

 げいまきまきさんは、女優パフォーマー元セックスワーカー。

 唐突に「セックスワーク」だの「パフォーマンス」だのと言われて、他人事と捉えてしまう方もいるだろう。けれども、げいまきまきさんは人柄の親しみやすさもさることながら、「生」の表現である、舞台・パフォーマンスでの活動を主としている。げいまきまきさんも、私たちと同じ土を踏み、同じ空気を吸う、人間だ。

 去年の春、げいまきまきさんが朗報を届けてくれた。

「セックスワークをテーマにするパフォーマンス・展示に、助成金がおりた!」

 朗報を受けてもうすぐ1年になる。いよいよイベント本番を目前に控えた げいまきまきさんに、少し話を聞いてみた。

プレイベントでの様子

 げいまきまきさんが、舞台表現をし始めたのは、意外と大人になってからのことだった。

げいまきまき「実は、本格的に舞台に立ったのは30歳越えて丁度セックスワークを始めたのと同時期です。無視や否定も含めて、やりとりが何かを蓄積していく点が、セックスワークも舞台表現も似ているなと面白く思えたんです。そこから、パフォーマンスは今に至るまで、セックスワークはB型肝炎を患うまで続きました」

 単純に「性」と「アート」を結びつけたアウトプット・作品と呼ばれるものは、世の中に沢山ある。そういった市場に対して、げいまきまきが思うところは何かあるか、尋ねてみた。

げいまきまき「私自身は『全裸』や『セックスワーク』をテーマにしたからといって、『性についての表現』という認識にはなりません」

自由=何でもあり、ではない

 2007年、大橋仁という写真家が、タイの売春宿で売春婦たちをゲリラ撮影した『SEA』という“作品群”を東京都写真美術館で発表した。皮肉にも、2014年に彼のインタビューから、その撮影手法が露わになり(美術館側は認知していたことも同時に分かり)実に7年越しの批判を受けることとなったわけだが、大橋仁はもちろん、公共の美術館がこのリテラシーというのは呆れるばかりだ。げいまきまきも当然、この件に抗議をしていた一人である。

 ゲリラだからこそ生まれる表現というものは、確かに存在するだろう。とはいえ、本名も出自も伏せて“働く”彼女たちの、顔や様相を無断で公共の場に晒すことが、どれだけリスクのあることかを想像するのはそんなに困難だろうか。

げいまきまき「『表現の自由』という言葉に甘えることには、懸念がたくさんあります。特に日本では『自由』=『単純に何でもあり』に変換される場合も多くて、その短絡さはつまらないし不誠実だと思います。『自由』にも背景があって、それを見つめることが、本来『自由』にとってはすごく重要なことだと思います」

 他にも2016年1月、京都市芸術大学が運営するギャラリー@KCUA(アクア)で丹羽良徳というアーティストが行った『88の提案の実現に向けて』という“作品”の中で「14. デリバリーヘルスのサービスを会場に呼ぶ」という項目を発表した事例も記憶に新しい。

げいまきまき「仮にそれが実現した暁に、やって来るデリバリーヘルス嬢に及ぶあまりに恐ろしい危険性について、私は単身解説に向かいました。結局抗議もする形となりました。これについては、未だに着地できていません」

 それでもアートを見捨てない? 理由を聞いてみると、基本的には、げいまきまきにとって芸術は「分かち難いもの」らしかった。

げいまきまき「好きな芸術表現も沢山ありますが、それを取り巻く状況には辟易することも沢山あります。私と芸術は分かち難い仲なんです。
世界を見てもまだまだセックスワーカーは公的にも個人的にも苦境が多く闘いが必要です。
私は日本でセックスワーカーの安全を応援するSWASHというグループやゲイコミュニティセンターにも所属していて、何度か国際エイズ会議や国際的なセックスワーカーの集りに参加してきました。大抵デモやパレード、クラブでのショータイムがあります。セックスワーカーは優れた表現者も多いのです。当事者だけではなく、時に非当事者のアーティストも前述のような搾取的な表現ではなく、共闘を可能にしてきた表現もあります」

「セックスワーカーに赤い傘」

 そう言って紹介してくれたのは、セックスワーカーの権利運動のアイコンである赤い傘の話だった。セックスワーカーたちが活動の際に掲げる「赤い傘」は、もう少し身近な例でいうと、LGBTQのシンボルとされるレインボーフラッグ的な存在だ。当事者・支援者共に、このシンボルを掲げることによって団結することができたり、エンパワーメントされたりしている。

 この「セックスワーカーに赤い傘」というシンボルの起源は、2011年に開催された「第49回ヴェネチア・ビエンナーレ」で、スロベニアのアーティストTadej Pogachar(タデイ・ポガチャル)が発表した『CODE:RED』という作品。

 社会的にも、活動家としても、極めてマイノリティな「セックスワーカー」たちが運動の際にシンボルにしている「赤い傘」は、アートが起源だった。

 他にも、げいまきまきさんは私に、写真家SophieEbrard(ソフィエブラード)や、パフォーマンス集団Krasnals(クラスナルズ)のことを話してくれた。

 日本では、ダムタイプの活動が、セックスワーカーやドラァグクイーン、ゲイカルチャーの牽引者たちからの支持が熱いことも思い出した。

 アートの力は、プロパガンダにも使われるくらい強力なのだ。誰かの存在を脅かすために使われては、決していけない。

 けれども、あまりに非力な存在をエンパワーメントできる唯一無二の可能性を秘めていることも紙一重にある。

 赤い傘を、さそう。

イベント『Have a nice day! Sex worker』

2019年2月22日-24日、3月1日-3日/計6日間

CCOクリエイティブセンター大阪(名村造船場跡地)

パフォーマンスと映像・音響の展示+トーク
(※このイベントは一回一回、2時間、パフォーマンス、展示、トークが全て詰め込まれてます。パフォーマンスとトークは毎回違います。)

詳細はこちら

 

ヒラマツマユコ

1992年、広島生まれ。2014年、京都造形芸術大学卒。都内在住。
2013年に子供を産んだが、未婚。というか非婚?
中学時代、不登校・引きこもり・鬱などを経て、17歳で高卒認定を取得。貯めに貯めた充電を使い大学時代はフル稼働。今は美術関係の仕事をしている。

@itomushi