10日、千葉県流山市が「恋届(こいとどけ)」なる文書の届け出を受け付ける取り組みをスタートしたことが報じられ、賛否両論を呼んでいる。
一見、婚姻届や離婚届に似た書式の同文書には、「自分の名前」「恋人または恋人になってほしい人の名前」「出会った場所や日時」などを記入する欄がある。法的な効力はないが、「恋愛中であることを証明」する文書になるといい、流山市は【若い世代の人たちの恋愛を後押しする目的】【少子化対策の一環】として、5月末までの期間限定で文書を受け付けるという。
しかし、積極的な恋愛を呼びかけることが少子化対策になるという考え自体どうかしている。恋愛・結婚・出産をセットで結びつける思考停止こそが、現状の少子化傾向を招いているのではないだろうか。また、「恋人」だけでなく「恋人になってほしい人」の名前も書いて出せるというところも疑問だ。二次元のキャラ名や好きなタレント名などを記入し提出する程度ならば仲間内で楽しめる催しかもしれないが、誰かが一方的に自分の名前を書きつけて提出していたら……と考えると、法的効力は何もないとしても薄気味悪い。案の定、ネット上では「ストーカー促進になる」「他人に名前を書いて送りつけられたら怖すぎる」「出しても意味ないなら、何の後押しにもならんだろ」と非難の声がちらほら出ている。
行政が大真面目にこれを「少子化対策です!」と謳っているとしたら確かに税金の無駄遣いだとも言いたくなるが……実際のところ、どうやらこれは、流山市を舞台にした新作邦画のPRの一部のようだ。流山市のHPから「恋届」の項目へとぶと、向井理、早見あかり、竹内太郎(テレ朝竹内由恵アナの実弟!)らが出演する映画『百瀬、こっちを向いて』(5月10日公開)と連動した特設ページが開く。そこには少子化対策などという文字はなく、【流山市では、映画『百瀬、こっちを向いて。』(5月10日公開)のロケ地として協力を行ったことを記念し、映画のテーマである「若者が恋をする気持ち」に賛同し、「恋届」を受付する窓口を設けております】とだけある。なるほどそれならば合点がいく。であれば、わざわざ「少子化対策」「若者の恋愛を奨励」などと喧伝しなければ良かったように思うが……流山市はあえて炎上を狙ったのかもしれない。
(清水美早紀)