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絶倫男の不倫事情に歯ぎしり…「春キャベツとオイルサーディンのパスタ」

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こんにちは。自意識和代でございます。
春ですね。
春……春……青い春(遠い目)
……ってちょっと。横道にそれてないで次のメニューを決めなきゃよ~!
そうだよねと思いながらスーパーをウロウロしていたら春キャベツが目にとまりました。
まあ、キャベツなんていつもゴロゴロしているので発見というほどのものでもありませんが「春」キャベツです。

春キャベツを見て、初めて食べたオイルサーディンのパスタを思い出していました。
今回のお喋りはそのパスタを食べた店でのお話です。

~回想~

数年前のある日。
プラッとひとりで入ったカジュアルなビール屋さんでリーマンRに出くわしました。
たまたまその日はカウンターに自称TVプロデューサーがいて、セクハラ言動を私にはたらいて来まして。
カチンと来た私はつい応戦し、自分で溜飲を下げフッフッフと思ったところにRが登場したのです。

Rはこのビール屋店主の同級生で、店を応援する意味でよく飲みに来ているのだそうで、
私が庭に迷い込んできた野良犬みたいに見えたのでしょうか。
Rの友達と共にカラオケへ連れ出されました。
帰り際、「俺をあんたの息子にしてくれ」という謎の告白を受け、
「今後うちの彼から連れ回されると思うんでよろしく」とRの彼女から挨拶をされました。

数日後、「飲みに来い。金は出すから」とRから電話がありました。
次々と自分の仲間を紹介してくるR。面倒見がいいのか、みんなに慕われているようです。
単身赴任の警官とRと私で飲む日もあれば 、呼び出されて小汚い格好で向かってみたらRの同級生の結婚式3次会だったという日もありました。
いくらなんでもアウェイ過ぎるだろ……
同級生の女子たちは明らかに引いていましたが、Rの荒っぽい紹介によって私は女子たちの輪の中へ受け入れられました。
まんべんなくみんなに声をかけてまわるR。
スプリンクラー……。

後日。Rは既婚者で子持ちだと判明。
人づてにそれらしきことは耳にしていましたが、R本人から白状されました。
「うちの彼に連れ回されると思うんでよろしく」と私に挨拶してくれた彼女は浮気相手だったのです。
気にしないようにしようとしばらく普通にしていましたが、やはり心のどこかでモヤモヤ。
私がなんとなく忙しくなったこともあり、Rの誘いを断るうちに疎遠になり1年くらい過ぎました。

~秋~冬~春~夏~秋~

久しぶりにRから電話。店に寄ってみました。
ら。
Rは友達に絶倫近況報告をしていました。
最近は朝5時に起きて家を出て、彼女の家へ行って一発ヤって出社するんだと。

「ほら、朝だし彼女起こしてあげなきゃね!」
「すげえな……そりゃ子供3人も作るわけだ……」呆れるような感心するようなRの友達。

ズン……
Rはひとしきり友達と話していましたが、しばらくしてRの子供が描いた絵の写真を私に見せてきました。
「どう? どう?(笑顔)」
どう反応しろって言うんだ……と思いつつiPhoneの中の絵を見て私は相槌を打ちました。
その時彼女はその場にいませんでした。

出社前の早朝に逢い引きだなんて、なんだかぞんざいな感じがして嫌だなと思いました。
「へい彼女! 早いとこRの元からズラかりな!」と思いましたが、こういう時は他人の言葉はなかなか耳に入りません。
それに彼女がRに惹かれるのもわかる気がしました。

人間臭くて、気のいい親分肌なR。
ある日Rから飲みに誘われて断ったら「何が問題なの? 時間がないなら仕方ないけど、お金がなくて断るんだったらそんなん出すよ?」と言ってくれたことがありました。
Rは私よりも年下でしたが、Rはリーマンで私がビンボーだからと気遣ってくれたのです。
そういう気遣いは、Rの周りにいる友達みんなに降り注がれているようでした。
また、単身赴任のおっさん警官Mさんとよく飲んでたそうで。
Mさんの東京ライフはRがいたことで随分楽しめたんじゃなかろうか。
Rは面白いし喋ってて楽しいし魅力ある男だけれど。
でも……でも……挨拶してくれた彼女や奥さんのことを思うとやっぱりグギギ……と歯ぎしりしたくなるのでした。

再びその店から足が遠のきました。
私は数組の夫婦を思い出していました。

長い長い不倫の末、結婚した夫婦。一途な女性の粘り勝ちという印象でした。

同じく不倫。浮気されたあてつけにお互いに他の人と関係を持ったり、親とバトルしたり、すったもんだした末に結婚。
子供が生まれた後、男性が亡くなり。
女性は長い戦いを強いられていたそうですが、お金持ちになったとのことです。

長く連れ添っている老夫婦の過去の危機。
老夫婦が若かりし頃。
奥さんが毎月30万円の謎の出費について調べていたら、旦那さんが浮気していてお金を相手に渡していたことを知り。
浮気相手のところへ啖呵を切りに行き別れさせたことがあったそうです。
「あなた昔遊んでいたじゃないの」「そうだっけ」という会話を直に聞き圧倒されました。

それから、随分昔に立ち読みした桃井かおりの雑誌『時刊MOMOIKAORI(1号)』( 学習研究社)の記事を思い出していました。
茶色のドーランを塗った桃井かおりが表紙でした。
とある遊牧民族の婚姻の形について。
その遊牧民族の男たちは転々と旅をします。
一方、女たちは移動せずに旅の拠点にいて旅人たちを迎えます。
訪れた男たちと関係を持ち、その印に貝殻を貰って首飾りに加えていきます。
旅から帰って来た本当の旦那が妻の首飾りを見て 、
「たくさん愛してもらって良かったね」と喜ぶんだそうな。

お……大らかだな……。
……心から喜んでるのか? 嫉妬はしないのか?
心底旦那に惚れてたら、他の男と寝るなんて苦痛だろうし、
旦那に愛想つかしてたら、ウハウハで「いらっしゃいませ~♡」かな?
旦那に惚れてたけど、旅で巡り会った男を好きになってしまい困ったり、燃え上がって駆け落ちしたりはしないんだろうか。
逆に「旦那としか寝たくない」と、旅人との関係を断固拒否して、周りの女たちとの軋轢ができてしまうとかなかったんだろうか?
慣習だから仕方ないと割り切れる部分と、たとえ慣習でも受け入れられない部分の境界線が私たちとはきっと違うんだろうな。
この民族の結婚に対する姿勢は日本人とはかなり違うから聞いてみないとわからないな。
厳密に言えば同じ地域でもみんなそれぞれ違うだろうし。

人間の心には、慣習・置かれた状況に順応するタフさがかなりあると思ってきました。
でもそれもある程度までなんだろうなと今は思います。その程度も人それぞれで。
だから、世間では良しとされていることが本人にとって受け入れがたい時、順応できずにはみ出したり爆発します。

結婚制度になじまず浮気を繰り返す人。
浮気しないけど結婚そのものをしない人。
誘拐婚を受け入れられず自殺してしまったギリシャの女の子。
自由でいいねと言われるか、勇気があると言われるか、わがまま勝手だと言われるか、環境がひどいと言われるか、その時々の状況で周りの対応も違ってきます。
どんな形をとるにしても決着は自分でつけることになりますね……。

あら。
オイルサーディンの話がこれっぽっちも出ませんでしたね。
Rの子持ちカミングアウト後、ひとりで出かけた時だったでしょうか。
何気なく頼んだオイルサーディンのパスタが気まずい状況とはうらはらに美味しかったのです。
なんとも言えない気持ちのまま、レモンの酸味が広がっていきました。
では参りましょう。春キャベツとオイルサーディンのパスタ

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自意識和代

人の好意をなかなか信じられず、褒め言葉はとりあえず疑ってかかる。逆にけなし言葉をかけられて「なんて率直なんだ!」と心を開くことがある。社交辞令より愛あるdis。愛がなければただのdis。凹んじゃうよ! ラブリーかつ面倒なアラフォーかまってちゃんである。