薫子さんの切なすぎる片想い
爽太の店「ショコラ・ヴィ」のオープンからさまざまなアドバイスをするなど、マネージャー的存在の薫子さん。爽太が帰国して以来、彼に片想いしているが、気持ちを伝えられていない。ことあるごとに「ショコラ・ヴィ」にやってくるサエコさんやえれななど、爽太の女性関係に嫉妬して素直じゃない発言が多々飛び出すが、彼女にも共感できるポイントはある。でも不器用すぎるのよね。
「爽太くんが好きになるのって尻軽なメス犬女ばっかりだよね」と感極まってぶちまける薫子さん、あっさりと爽太くんに「俺は女の悪口言う女は大嫌いだ」と言われてしまう。妬み僻みは形を変えて自分の心をねじ曲がらせて、どす黒い感情に汚染されていく。
でも薫子さんが言ってることって特に間違ってはないのよね。爆発するタイミングを間違えただけで。好きとも言ってないのに大嫌いと言われる薫子さんの脇役加減には、ただただ同情するわ。
薫子さんこそ一番その場から動こうとしない人なんだから進展がないのは当然よね。ただ、片想いして辛いのは爽太だけじゃない。爽太は自分が一番辛いって勝手に思って勝手にひとりの人妻に執着して。なのにその爽太のこと好きな人はどうしたらいいんだろう。
結局サエコを一度も手に入れられなかった爽太
登場人物が切なく純粋な片想いをしている一方で、それぞれの目線から描かれている恋愛における計算高さやしたたかさなどがリアルに描かれているところも、このドラマの大きなチェックポイントだった。
「サエコさん、ここまで来ても俺は本当のあなたを知る権利もないのかよ。俺は、どういう使い勝手なんだよ」
→サエコの本音…「美味しいチョコレート食べ放題と家を提供してくれる使い勝手のいいお友達だよ♪」
いやね、爽太くんはサエコさんにいくら好きだ大好きだと言っても、サエコさんは一度も好きと爽太くんに言ってないのよね。
サエコに夫との子供を懐妊したと告げられた爽太はそれでもこれからの展望を話す。三人で暮らそうとか、夢物語を。でも「爽太くんとのことは逃避にすぎなかったと気が付いた」と言われてしまう。「爽太くんだって同じでしょ? 爽太くんが好きだったのは本当の私じゃなくて幻想でしょ」と。そして爽太は気付く。サエコさんを抱いた夜からショコラを作れなくなっていることに。「あの時、俺はサエコさんを手に入れたんじゃない。失ったんだ」ってどんだけ女々しいんだか。
サエコを手に入れた瞬間、思った通りのショコラを作ることを失った。サエコになんとか自分を見て欲しくて、なにもかも頑張ってきて勝手に好きで居続けてしまって。そんな相手と急激に距離が近づいたらもしかするとこうなるのかもしれない。でも、失うもなにも、はなから手に入れてすらいないのにな。
サエコさんはきっと「旦那とうまくいってない間の居所ゲット、しかもチョコ食べ放題~」くらいにしか思っていなかったからあっさりと家に帰っていったんだわ。妊娠していたことがわかっていようがいまいが、その不倫の代償も払わずに旦那のもとに最初から帰るつもりだったんでしょーが。悪女よ、悪女だわ……! とはいえ、サエコさんが旦那との関係を心地よく感じていなかったことは事実。旦那は家庭を顧みないタイプなうえに、妻は家の中に縛り付けておきたがって、サエコさんの人権を尊重していないように見えた。そんな人とヨリを戻して子供を産んで、どうやって育てていくつもりかしら。またいつか爆発することは目に見えているような気がするんだけど……。
出会った人としか恋はできない
ラスト。
「結局、サエコさんを幸せにしたいとか言いながら、サエコさんに、ずっと助けてもらってたんだよ。でも、いつまでもそれじゃ駄目だよね。あなたが居なくても、自分の力だけで、ショコラを生み出せるショコラティエにならないと。だから俺、サエコさんとは二度と会わない。俺は、あなたが居なくちゃショコラを作れない自分と、決別しなきゃならないんだ」
これは良かった。爽太の今までで唯一男らしい選択だった。良いサヨナラできて良かった。ブラボー。
でも不倫してたことが旦那にばれずにお気楽主婦生活を送るであろうサエコにはやっぱりイラッとするわね。旦那、気付け。
そして爽太は全てを清算したうえでえれなのもとへ行く。サエコさんとダメになったからえれなに行くわけ? と憤慨していた私だけど、謝ろうとする爽太に、えれなは「もう告白したらスッキリしてしまって。私が爽太くんを振ったの。だから、謝らないで」とかっこよく笑顔で言い放った。告白しときながら振るなんてかっこいい。そして酷い最低な対応をされたというのに、真っ向からぶつかって感謝を伝えるなんて素敵な女。水原希子は最後まで私の天使! 相変わらず芝居は下手だけどホントにタイプ!!!
そしてこのドラマの中で私が一番心に染みたセリフは、意外にも脇役キャラで何も共感できなかったオリヴィエというキャラクターの言葉。
「この世の中はどんなお金持ちだろうと、どんな美男美女だろうと、ハリウッドスターだろうと、王子だろうと、出会えた人としか恋は出来ないよ」
本当にその通りではっとしたの。そう、もっと上、もっと上なんて理想を追い続けてもそんな人に出会える保証はない。
今出会えてる人を大切に。これから出会う人を大切に、改めてそうやって生きていける女でありたい。
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