連載

「生(ナマ)」をやめられない国・ニッポンの風俗を考える「セックスワーク・サミット」に参加してみた

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そんな本橋氏のお話を聞くにつれて、ナマ問題を語るゲストとしては、わたしは正直疑問を感じました。
なぜなら、鶯谷は先の通り過激な風俗店が売りとはいえ、別にナマ問題は鶯谷に限らないこと。そしてご著書の『東京最後の異界 鶯谷』について「実は1カ月ぐらいで書き上げた(笑)」と笑い話のように語っていたからです(それって深くコミットしてないってことじゃん!)。
執筆スケジュールがタイトだったならば仕方ないかもしれません。
にしても、本橋氏のナマ問題に対する認識もぼんやりとしたもので、
「なぜそんなに男はナマで中出しをしたいんですか?」という質問に対しても

「男の本能だからしょうがない」

とざっくりしすぎ。

今、コンドームは0.02mmの時代です。0.02mmですよ!
限りなくナマに近いであろうに、そこまでナマにこだわる理由を、はたして「本能」の一言で済ませていいのでしょうか?
さらに、

「僕は風俗嬢が大好きなんです」

と本橋氏は言うけれど、

大好きな風俗嬢の労働条件が少しでも改善されることには無関心と感じられたのも残念でした(わたしの偏見かもしれませんが)。

これは本橋氏だけでなく、ほとんどの男性に言えることなのかもしれません。
所詮、他人事なのです。
「風俗嬢は、時々僕が可愛がってあげる存在で、可哀相でも『しょうがない』」と言うのは、
全然「愛」じゃない!
わたしはこんな夢見がちなおじさんの話を聞きに来たわけじゃない!
もっと現場の人の声を!
と、サミット参加中にイライラしていたその時、司会者が、ある参加者の意見を読み上げました。

「ナマでヤリたいのは、男性側にも『拒絶されたくない、僕の精子をありのまま受け入れてほしい』という自己承認欲求があるのではないでしょうか」

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ハッとしました。
わたしはそれまで、ナマでしたい男は「敵」でしかなく、常に男は強者で女は弱者という図式しか見えていなかったのですが、たしかに、男も寂しさを抱えていて、そのはけ口が風俗でのゴムなしのナマ行為だとしたら、まずは男も自分の心の問題に向き合うべきでは?

考えてみると、世に溢れるAV嬢や風俗嬢、援助交際に走る女の子のルポ本は、全て「可哀相な女の分析」ばかり。
風俗に通うのは男なのに、セックスをするのは男なのに、男の心情を語る本は、ひとつもありません
ある風俗嬢の方の話によれば、ただ添い寝だけをするためだけに週5日通う人もいるそうですが、そこには「男の本能だから」という言葉で済まされない寂寥感を感じます。
そういう男の心情を丁寧にルポした本はまだ読んだことがありません。
男の人は、自分の気持ちを語る文化が乏しいのです。
「本能」の一語で済ませてしまうから、「死の恐怖よりエロスの快楽~」とか呑気に言って、ナマ行為自体を深く考えない。
そんな人にいくら「ナマはダメですよ!」と正論で怒ったところで通じないのは無理もない。
男が自分自身をわかっていないのですから。
幸いにもこのタイミングで主催の坂爪真吾氏が、まさに男性をクローズアップした、男子の・男子による・男子のための、新しいセックス論を書かれたそうです。
男子の貞操―僕らの性は僕らが語るー(ちくま新書)4月9日発売予定

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今回、サミットに参加して本橋氏のトークや、上記参加者の方の意見を聞き気付きを得られたことはとても良かったです。
ただ、もう少し当事者の意見や具体的な解決策について議論したかったので、いろいろ未消化だったのが残念でした。
殺人行為・ゴムなしナマ問題は公の場で語られるべきだと思うので、微力ながらも本コラムでひとりでも考える人が増えることを願います。

さて、この日わたしはこのような性的な話を真面目に語る場に来る女をヤレると思い、
のこのこやって来たおこぼれちんぽに出会うというネタも拾ってしまうのですが、次回はそのゲス男のエピソードをお話したいと思います。

(続)

■ろくでなし子 /漫画家。日本性器のアート協会会員。自らの女性器を型どりデコレーションした立体作品「デコまん」造形作家。著書に『デコまん』(ぶんか社刊)。『女子校あるある』(彩図社刊)

ろくでなし子ホームページ http://6d745.com/
日本性器のアート協会ホームページhttp://www.jsoa.jp/

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ろくでなし子

漫画家。日本性器のアート協会会員。自らの女性器を型どりデコレーションした立体作品「デコまん」造形作家。著書に『デコまん』(ぶんか社刊)。『女子校あるある』(彩図社刊)

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