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『映画 プリキュアオールズターズ』の父親不在に苛立ち

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『映画 プリキュアオールスターズ NewStage3 永遠のともだち』公式HPより

 3月、3歳になる娘と一緒に、『映画 プリキュアオールスターズ NewStage3 永遠のともだち』を見た。歴代のプリキュアが総登場し、70分ほとんどバトルしまくる面白い作品だった。新人プリキュア(現在放送中の『ハピネスチャージプリキュア』)は頼りないけれど可愛くて、先輩プリキュアたちは凛々しく強くかっこいい。娘も他の子供たちも、おとなしく座ってスクリーンを見つめていた。

 そして先日、近所の映画館での上映終了前日にもう一度あらためて鑑賞してみた。最初に見たときに少しだけ抱いた違和感を確かめたいと思ったからである。

母親の溺愛を振り切り、立ち上がる少年

 映画の主人公はプリキュアではなく、夢を食うバクの妖精・ユメタ。あるとき人間界で、多くの子供たちが眠ったまま目覚めないという症状に見舞われる。ユメタの母・マアムが、ユメタにとっての「友達」を囲うために、子供たちを楽しい夢の世界に閉じ込めてしまったためだ。子供たちを救うため、プリキュアたちは結集して戦う。

 「これはいけないことなんじゃないか」と不安がるユメタを、マアムは「何も心配しなくていいの」と優しく抱きしめ、「ユメタに変なことを吹き込んだのはあなたたちね!」とプリキュアに対して激高する。

 本来はバクとして悪夢に出てくる獣を退治する役目があるユメタだが、幼く臆病なユメタはいざ悪夢獣を目の当たりにすると怯えてしまい、とても退治などできない。マアムは叱咤激励してユメタの成長を促すことはせず、彼を守り、代わりに悪夢獣を駆逐している。過保護で子離れできていない母親そのもので、いわゆる「毒母」や「モンスターペアレンツ」に近いものかもしれない、と思わせる設定だった。

 ストーリーの中でプリキュアや他の妖精たちとのかかわりを通し、勇気を振り絞ってひとまわり成長するユメタ。母の庇護下から脱け出し、「今度は僕がお母さんを守る!」「友達がいるから大丈夫!」と力強い姿を見せる。観客である子供たちにとっても、その親にとっても、映画の大きなテーマである“友情の大切さ”や“子供の成長を見守ること”、“夢を叶えるのは自分自身の努力”といった、ともすれば説教くさいメッセージが十分伝わる良い映画だったと思う。

 しかしひとつだけ気になったことがある。「母と子」の関係を描く一方で、バクの家族には父親が不在だったことだ。

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