カルチャー

『映画 プリキュアオールズターズ』の父親不在に苛立ち

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父性の欠落

 物語の構成上、息子を溺愛する母と弱く甘えん坊な息子との関係に父親を絡ませると、ストーリーが複雑になってしまう。幼児にもわかりやすく、かつ子供が映画に集中できる1時間程度の短い時間で、話を詰め込みすぎないようにするためには、この構成で良かったのかもしれない。しかし今の日本では、「父・母・子」の3人家族だったとしても、子供との関わりは主に母親が担うという現状を象徴しているようにも見えた。

 妖精だって母親がいる以上、生物学上の父親もいるだろう。この「父親不在感」は、テレビのプリキュア本編ではあまり漂うことがないため、余計に違和感を覚えたのかもしれない。

 子供を育てる家庭で、困難にぶつかったり問題を抱えたりするのは大体、「母と子」の間で、そこに父親が介在するのは、母が倒れたり出奔したりで父が現場に出て行かざるを得なくなったとき。これまで放送されたイクメンをテーマにしたテレビドラマではおおむねそんな感じだ。「母」がいれば、「父」は子育てを二の次にしてよい(あるいは、いなくてもよい)という空気を、社会全体から感じる。これは気のせいだろうか。

 常々疑問に思っていたが、子作りつまりセックスは男女両方の共同作業であるのに、身ごもって出産する体が女性であるというだけで、その後の子育ても女性の仕事にさせられているような気がする。それをおかしいと口にすれば母性の欠落を指摘されたり母親失格の烙印を押されたり。男性は何をどうやっても父性の欠落を非難されたり父親失格と罵られることがないのではないか? 妻の妊娠中や出産直後に浮気をしても「寂しかったから」で許されるような、そんな生温い空気。正直、「死ねよ」と思う。

罪悪感を男も負うべきか

 もうひとつ、胸に引っかかっていることがある。

 娘は二度目に見に行く前日、「ジイジ(=筆者の実父、遠方在住)と行きたい!」と言っていたのだが、それを聞いた義母が苦笑しながら「ジイジはプリキュアの映画なんて我慢できないわよね~」と言ったのだった。

 確かに映画館では、二度とも「ジイジ世代と孫」のカップリングにはお目にかかれなかった。そして実際、娘のジイジ、つまり60代のオジサンなわけだが、彼は孫に「一緒にプリキュア見に行きたい!」とねだられたら、うれしそうな顔を見せつつも「勘弁してくれよ~(笑)」と言って行かないだろう。

 なぜだろう? と疑問に思った。そこは父母や祖母の役割なのだろうか。そもそもなぜ「ジイジは我慢できない」のか。1時間くらい3歳児を膝に乗せて、スクリーンを見ていればいいのに。よく、「今の子供は7ポケット」「甘やかされ過ぎ」と言われるが、家庭で甘やかされているのは父親やジイジの方ではないだろうか。男親、甘やかされすぎだろ。子供や孫が可愛いなら我慢しろよ、というのが正直な気持ちである。

 母親はいつも世間から「子供を愛しているなら自己犠牲を払え、我慢しろ」とプレッシャーを与えられている。であれば男親も、プリキュアの映画に興味がなくても退屈でもバカバカしくても我慢したらいいのではないだろうか。そもそも「子供の相手をする」こと自体に我慢を強いられるという精神構造自体に、母親は罪悪感を抱きがちな傾向があると思うのだが、男親はそこで「めんどくさいな~」と思うことで罪悪感や「俺なんて親になるべきじゃなかったんだ……」という葛藤を抱えることはあるのだろうか。

 たとえば母親が友人の結婚式で留守にし、幼児と男親が二人きりで朝から晩まで過ごすとする。子供の世話に手を焼き、「早く帰ってきてくれないかなー」とボヤいたり、「もう限界、早く帰ってきて」と妻にメールを送ったりすることに何の抵抗も感じないとしたら、何とも幸せで羨ましい限りだ。いやいや元を辿ればてめえの精子だろーが。受精してるんですよ?

 子供を産んだら妻は無条件に優しく子供と夫の世話をする「女神さま(あるいは聖母)」になり、子供は「天使のように愛らしい生きもの」だと勘違いしている男は未だに少なくないように思う。それは女子供を自分と同じ人間として認識していないのと同義ではないだろうか。「男は会社で頑張っているんだから、家では甘やかしてほしい」という言い分もあるかもしれないが、では女はどこで誰に甘えればいいのか? どこかで誰かに甘えることは許されないのか? 父親不在の状況が、前述のマアムのような「子供を溺愛するあまり、行き過ぎた行動を取る親」を生み出す一因になっているとも考えられる。母親の気持ちには行き場がない。

 プリキュア映画から話が飛躍しすぎてしまったが、この違和感を見過ごせず筆を進めた次第である。映画自体は非常に面白く、声優初挑戦の剛力彩芽も別におかしなところはなかった(誰がやってもそんなに変わらないような気がした……)。ちなみにマアムのCVは『うる星やつら』のラムちゃんだった。ビューティフルドリーマーな男親たちは子供を連れて足を運んでみてはどうだろうか。
(下戸山うさこ)

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