私の名前は白咲麗華(Shirosaki Reika)25歳。
……実年齢は27歳です。
どうしてこんなに紛らわしい名前に加えて年齢詐称までしているのか……
少し私のクエスト……冒険のストーリーを聞いて欲しいの。
働かないモラハラ夫
私は秋田県の田舎から出てきて、東京で美容師として働いていたわ。
世間知らずのまま22歳の時に出会った、人生2人目の恋人と結婚したの。
彼は7歳年上で現在34歳のクリエイターで、輝いてた……。私にない世界を見ている彼が眩しかったわ。
古風な人で、私に結婚したら仕事を辞めるように言ったの。「働いたら離婚する」そう言われたわ。
まして美容師の仕事は男性のお客様とも関わるから、旦那の大反対に合い、私が折れる形に……。
でもその時の私は、結婚したらバラ色の人生が待っているのだと信じてた。
だから仕事も辞める決断をしたの。少女漫画の読み過ぎ、ラブソングの聴き過ぎだったのかもしれないと今になって思うわ。
だけど結婚後しばらくすると、彼は仕事の付き合いだと言っては新宿や六本木の繁華街を飲み歩く、働かない自称クリエイターオジモンになってしまった。
これが夫の本性だったのかしら……。
「お前の生活費はお前でなんとかしろ」
「家賃は払ってやってるんだから感謝しろ」
「お前の定期預金と保険は解約したから」
「外で働くのは許さない」
日々投げかけられる様々なモラハラまがいの言葉に胃がキリキリ痛んだわ。
いつしか貯金を切り崩して生活するようになった私は、今や独身時代の貯金も底を尽き、貧困の谷に転落してしまったの。
憧れの映画のような結婚生活は現実にはなかった。
オジモンと化してしまった旦那との離婚を考えるようになったわ、毎日毎日。
そのためには一刻も早くお金を貯めて、家を出たい。
美容師として再就職してもお給料は決して多くないことを知っているし、何年ものブランクがあるから仕事に自信もない。短期間で離婚資金を貯められる仕事を探さなきゃ……そうして私は、水商売で働くことを決心したの。
きっとこのクエストは、旦那にバレたらゲームオーバー……。
約束の十字架(クロス)
生まれて初めての水商売という世界、飛び込むのはものすごく怖かった。Googleで検索するだけでも恐れ戦いて震えたわ……でも、決めたの……自分の自由のために……。
週に3回程度なら、旦那にバレずになんとかなりそう。場所は、旦那のテリトリー外の銀座が良いわ。未経験だからこそ客層が落ち着いていそうな高級店が良いかしら……。
Google検索で条件を入力して一番上に出てきたサイトにアクセスし、電話をしたら、
なんと即日、夕方に面接してもらえることに。
銀座の駅で待ち合わせして、すぐに簡単な面接、そして体験入店へトントン拍子に事態が動いていったの。
そのお店は履歴書も、身分証明書も要らない、驚きの面接だったわ。
社長と雑談して「オッケー! 体入してみよっか!」
これがバイヴス? フィーリング? 銀座ではフィーリング面接が王道なの? それとも水商売ってどこもこんなバイヴス重視なのかしら?
様々な疑問と衝撃を抱えながらも、実費でヘアメイクを済ませた私は、レンタルドレス屋に黒服のオジサンに連れて行かれたわ。
そこで私の黒歴史が火を噴くことになろうとは……
なんと私は、初めての彼氏と付き合っていた頃、彼氏に言われるままに、左腕に十字架(クロス)のタトゥーを入れてしまっていたの……
若気の至りの痕跡……
結局、「うちの店はタトゥーNGだから」と黒服に言われ、体験入店はしたものの、不採用になってしまったの。
あの時、目敏くタトゥーを見つけた黒服を憎む(=逆恨み)気持ちが燃え上がったけど、でも仕方ないこと。過去の私を責めたわ……。
どうしよう……銀座はタトゥーNGが常識なら、どこのお店でも働けないかもしれない。
このまま働けず終いなら、離婚も出来ない!?
白咲麗華ピンチ……!!
~つづく~
■白咲麗華(Shirosaki Reika)/ 秋田県出身。モラハラ旦那に悩まされ、銀座のクラブでこっそり働きはじめた。このコラム連載ももちろん秘密。
(イラスト/ナマコラブ)