大和:でもセックスワークでは、病気に感染するリスクも高まりますよね。そのあたりは危険視していなかったのですか?
B:私もそれは気になりました。デリヘルは不特定多数が相手だし、風俗に行く男は他の風俗にも行ってるだろうし。万が一病気に感染してしまってお付き合いしている彼に病気を移してしまってはいけないので、その時付き合っていた恋人とは、デリヘル業界へ飛び込むと同時に別れました。
大和:Bさん自身はセックスワークについて肯定的に捉えているようですが、『失職女子』のように、来月のお家賃が払えないという人に、風俗の仕事は奨励しますか?
B:風俗は一回はやってみていいんじゃないかな、とは思います。やってみたら意外と向いてるかもしれない。今は風俗でもいろんな需要がありますし、熟女とか。
ただ、精神的にも肉体的にも厳しいことは事実。自分のことを大切に考えられない人は、病むと思います。風俗で働いてることを、笑い話にできない人はやらないほうがいいと思う。だから、話せる友人がいない人は、やらないほうがいい。自分に向いてるお店を見つける自信がない人も、やらないほうがいい。
そういう前提条件はたくさん上げられますが、ただ、そこで得られる日当は、その日暮らしで家賃が払えない……という場合にはすごく魅力的ですよね。その分、風俗で働いている間は、自分の逃げ道を確保しないとダメです。逃げ道っていうのは、例えば目標だったり友人の存在だったり、風俗をいつかはやめる覚悟だったり、もしくは、ずっと風俗の世界で生きるっていう覚悟だったり。私の場合はLINEで友人とその日のことを話すことで笑い話にして、病まないようにしていました。笑って性の話をできる友人関係というのが逃げ道でした。
将来の夢
大和:現時点では貯蓄4万円のBさんですが、将来どんなことにお金を使いたいですか? 将来の夢や貯金する理由を教えてください。
B:洋服も好きですが、下着も大好きなんですよ。だから、『ワコール』の『サルート』っていう高級ラインの下着を揃えてみたいですね。『サルート』おすすめですよ~。おっぱいが上がると、気持ちいいし気分もアガるんです!
もうひとつの夢は、老人ホームを作ることです! 完全バリアフリーの建物の建設と運営に関わりたい。15年以内にはその夢を叶えて、幸せなおばあさん、おじいさんが増えてほしいです!
大和:学生時代の研究を活かして。ちなみに将来、ご結婚はされたいですか?
B:子供は産んでみたいですけどね~。現状では、育てられないですから。子供の保育所って、この日に利用したい! って思っても、保育所の確保に、事前に2週間必要だったりすると聞くので……。突然の仕事が入りがちな職業なので、仕事か子供か、ってなってしまう可能性を考えるとためらいます。
大和:特定多数のセックスフレンドはいらっしゃいますが、結婚を視野に入れたパートナーはデリヘル入店前に別れたっきりいらっしゃらないんですか?
B:今はいないですが、心のメンテナンスのひとつとして、セフレではない男を置いておきたいですね。セフレは精神的に頼らないから関係を維持できるんです。けど、仕事や生活が本当に辛くなった時、誰かに「辛い」って言くたくなる。だから、「辛い」って言えるパートナーがいたらいいな、と思いますね。
大和:お父様の扶養に入られているとのことで、ご家族の関係は良好なんですよね。地元は東京ではないそうですが、帰るご予定はないのですか?
B:地元に戻る予定は今のところありません。先日も父親に、「結婚するなら(実家の)隣の土地買うけど」って電話がかかってきたんですけど、「申しわけないけど、今結婚する気はまったくないし、そういう理由で土地買う・買わないは、やめてください」ってはっきり言いました。まあ先のことはわからないですけどね。
インタビューを終えて
オーストラリアの大学を卒業してから受験勉強に取り組み、見事大学院を入学・卒業するということは、常人の気力と能力ではできないことを成し遂げたBさん。私と違って、有名大学院の修士号を持ってらっしゃっても、(失礼ながら)お給料は決して高いほうでもなく、常に職を失う可能性と隣り合わせ……。これが、働く女性を巡る、現代日本の実情なのでしょうか。
けれど、「今の仕事を選んだのはお金ではない」と語るBさんの笑顔は力強かったです。Bさんからは、「風俗の仕事は逃げ道を確保できないならやらないほうがいい」という、経験者ならではのお言葉、そしてBさんならではの風俗の現場を良くするための貴重なお考えもお聞かせいただけました。
15年後、Bさんのアイディア満載の老人ホームを訪問するのを、楽しみにしております! ありがとうございました。
■大和彩/大学卒業後、メーカーなどに勤務するも、会社の倒産、契約終了、リストラなどで次々と職を失う。正社員、契約社員、派遣社員など、あらゆる就業形態で働いた経験あり。
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