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「こんな屈辱的な私ドヤ!?」痛みを伴うパフォーマーの追求する不確かなもの

【この記事のキーワード】

手に入れた瞬間、要らなくなる

――仕事は慣れたらやめるって話してたけど、ショーの内容が毎回同じでも飽きない?

「ステージ(会場)は毎回違うし、会場ひとつでその時のテンションも変わるから全然飽きない。ずっと新鮮なまま、刺激を与えてくれる。セックスより気持ちいいと思う日もある」

――身体に何カ所も太い針を刺すわけじゃない? 血も出るし、もし刺しどころを間違えたら出血多量で生死に関わったり……とかいうことにはならないの?

「そのへんのケアをちゃんとしてもらえるところじゃないとしないし、知識がある人が刺すから心配はしてないんだけど、万が一そうなったら……まぁそういう運命だと受け入れられるかな」

――その心意気じゃないとできないか……プロねぇ。身体を完全に人に預けるわけだから、怖くないの?

「その道のグレーゾーンの人だから慎重にやってくれるよ。本当は医療行為だから、あんまりどんな人がやってるとかは言えないけど……ボディピ開けるスタジオの人だったり、人体の出血の少ない箇所を勉強してる人がやってるって聞いた。あんまり大っぴらにはしてないみたい」

――ボディ・サスペンション以外で嫌なことはないって言ってたけど、縄師に縛られて吊るされたり、唇を縫って口が開かないようにするとか、両胸の谷間を縫い合わせて乳房をひとつにまとめるとか、……他のパフォーマンスもやってるじゃない? そのパフォーマンスでも嫌なことはないの?

「嫌なこと……とはまた違うんだけど、女王様と組んで針と糸で身体縫い合わせるのは、ステージ上でしか縫われたことがなかったから自己陶酔して集中してこれもまた気持ちいいんだけど、一回楽屋で『仕込みでお腹だけ縫ってこい』って言われてお腹だけ針で縫われた時、集中できなくて痛みで失神したことがある」

――ええええ……痛々しい……。

「私やっぱり人に見られてないとダメなんだなぁって」

――見られてる時の表情、輝いてたものね。

「なんかこう……ドヤァ!! ってなるんだよね。私のことみんな見てる、こんな屈辱的な私どうよ!? って(笑)」

――かっこいいわ。今までの話を踏まえると、今後の目標とか今の仕事を経てやりたいこととか、特にないわけよね?

「うん、例えば仕事を辞めるとしても、大好きな男の人ができて、その人が私の仕事の刺激の代わりになるものを与えてくれるっていうなら……くらいには漠然と考えるけど。今そんな人いないからなぁ」

――なかなかいないと思うわよ。カナエ自身がそれだけ強い刺激を知っちゃったんだから、それ以上の刺激をくれる男って……想像もつかないわね。

「仕事を辞めてもいいと思えるくらい男に対して惚れることもないから、目標って聞かれるとな……しばらくダラダラこの世界に居続けることくらいしか思いつかないな」

――どんな男の人を好きになるの?

「コンプレックスの塊みたいな人。ブサイクな部分を隠そうとして化粧して誤魔化したり、常にマスクしてる男の人とか、たまらない!(笑)」

――化粧する男はイヤだけど、コンプレックスがある人は私も好き。それを克服しようとしてるとこにきゅんとくるわ。その人間らしさがいいのよね。

「わー、ちょっと似てるね! 例えば仕事と同等の刺激がある男が現れて辞めろって言ってきたら、もしかしたら辞めるんだろうけど……でも、どんな恋愛でも手に入っちゃうとつまらないんだよね」

――同感かも……。私のこと好きな人は可愛いなって思うけど。

「だからまた刺激が欲しくなったら戻ってくるかもしれないし。手に入らないものが欲しいわけであって……手に入るとすぐにわかるじゃない? 服でも物でもなんでもそう。買って自分のモノになったり、心を開かれて人間性を知っちゃった時点でつまんなくなるんだよね」

――私もディスプレイされてる服とかジュエリーがどんなに素敵! 欲しい! って思っても、手に入れた時点で魅力を感じなくなるタイプ。

「まさにそういうこと! 欲しくてたまらなくてようやく買った靴があるんだけど、家に帰って見てみたらそんなに可愛くないな……って冷めて、3回履いたら要らなくなったり」

――手に入るかわからない不確かなものを追い求めたいのよね。

「ずっと不確かなままでいい。好奇心だけで生きてるから、わかりきったものにも手に入るものにも興味がない。どう転ぶかわからないものを、ずっと追いかけてたい」

 赤裸々に人生観を語ってくれた過激パフォーマー・カナエ。「楽しい時に死にたくなる」という言葉に、私もはっとさせられた。確かに私も事故や震災、人に刺される……なんていう最悪な状況で死ぬよりも、「ハッピー!」と叫びながら朽ちていきたい。私にとってはそれが好きな男に抱かれている時だと思うわ。

 実は、実際にボディ・サスペンションの現場を見た私の感想は「ゲー!」でもなく「怖い」でもなく、「美しい」だった。

 ほぼ全裸に近い姿で身体を刺されるカナエは、悲鳴を押し殺したような声で苦痛に顔を歪めたが、そんな彼女の表情はとてもセクシーで、身体を宙に吊り上げられていき、伸びる皮膚を見て、人間の皮膚ってこんなに伸びるんだ……と驚いているうちに、くるくると回転し始める彼女。

 皮膚は赤く盛り上がり、絶対に絶対に物凄く痛いはずなのに恍惚とし、観客たちの視線を一心に受け止めながら整った顔立ちの笑顔で宙を舞う。その姿は何にも比喩し難いが、人間ではなく天使のような……そんな神々しささえ感じた。

 全身を委ねて身体の全てを使ったその姿には、アングラパフォーマンスという一言では到底片づけられないほどの感動を覚えた。ショーが終わると、カナエは横たわり流血しながら運ばれていく。肉体のすべてを捧げた仕事だ。

 このような仕事の裏側なんて、実際見たことがない人のほうがまだまだ多いはず。次週はどんな「必殺裏仕事人」が登場するのかしら? お楽しみにね。

asumodeusu

 

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アスモデウス蜜柑

好奇心旺盛な自他共に認める色欲の女帝。長年高級クラブに在籍し、様々な人脈を得る。飲み会を頻繁に企画し、様々な男女の架け橋になり人間観察をするのが趣味。そのため老若男女問わず恋愛相談を受けることが多い。趣味は映画鑑賞で週に3本は映画を見る。