・“待ってる女”の描き方が男にとって都合よすぎる!
携帯電話が普及していなかった1990年代初頭、恋人たちの連絡手段は固定電話や街角の公衆電話がスタンダードでした。会社に自宅に、恋人たちは電話をかけまくります。これはやや穿った見方かもしれませんが、例えばさとみが電話した時に限って三上が女性を部屋に連れ込んでいるなど、「女から男」の電話では不穏なことがしばしば起こります。しかし、それに対して「男から女」の電話ではあまりそういったことは起きません。カンチが電話する時、リカは植物の世話をしたり、ひとりでジグソーパズルに熱中していたりします。別に何ら悪いことではないのですが、私はここに演出・脚本含む制作スタッフが無意識に抱いている“男の都合よさ”を感じずにはいられませんでした。植物の世話やジグソーパズルの背景には、「彼女はいつもボクを待っていてくれる存在」「待っている時はボクに脅威を与えるようなことは絶対にしていない」という男の願望が透けて見え、薄気味悪さを感じてしまいました。
・男たちは巧妙に彼女へ責任転化する!
物語の終盤で、リカにロサンゼルスへの転勤話が舞い込みます。リカは帰国子女で、かねてより海外勤務の希望を出していました。しかし、それはカンチと付き合う前の話。いざ転勤の話が具体化すると、リカは大いに悩みます。そんなリカに対し、カンチは「リカの希望だったから」「あいつの夢を邪魔する権利はない」と言って積極的に止めようとしません。そんなカンチに、リカは不満を抱きます。ここからは個人的な推測にすぎませんが、リカは決して止めて欲しかったわけではないと思います。そうではなく、カンチ自身の意見を聞きたかったのではないか。「リカの希望だから」「リカの夢だから」と、カンチは何かとリカを主語にしますが、彼女が不満を抱いていたのは、こういったカンチの態度だったように感じました。「行かないで欲しい」でもいいし、「海外で夢を叶えて欲しい。その間は遠距離で付き合いたい」でもいいし、「やっぱりさとみが好きだから別れて欲しい」でもいい。とにかく自分自身の選択としての言葉を聞きたかったような気がします。こうやって相手を主語にして自分の希望を語らないのは、ある意味、相手に責任を背負わせるようなものです。こういう巧妙な責任転嫁の欺瞞を、リカはハッキリ見抜いていたのではないでしょうか。
以上、様々なシーンで感じた『東京ラブストーリー』への疑問点を簡単にまとめさせていただきました。お皿を洗わず、都合の悪い時には逆ギレし、油断していたくせに別れを切り出されると焦り出し、女性に対して都合のいいイメージを押しつけ、大事な場面で巧妙に責任転嫁して逃げ出す……。これが、1991年の人気ドラマに登場した男性像です。完全なる言いがかりですが、私にはそうとしか見えませんでした。
そして、あれから23年経った今、こうした男性像はどのように変化しているでしょうか。……1ミリも変化していませんよね。南無!!!
しかし、これは他人事ではありません。カンチの姿を見ていると、自分の中に住むクソ男を鏡に映して見せつけられているような気がして、軽い拷問にかけられている心地でした。カンチは俺だ……。そんな猛省を迫るドラマ、それが『東京ラブストーリー』です。
2014年の今こそ、男が見るべきドラマとして激しくオススメしたいと思います!! 押忍!!
■清田代表/二軍男子で構成された恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。失恋ホスト、恋のお悩み相談、恋愛コラムの執筆など、何でも手がける恋愛の総合商社。男女のすれ違いを考える恋バナポッドキャスト『二軍ラジオ』も更新中。コンセプトは“オトコ版 SEX AND THE CITY”。著書『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房)が発売中。Twitterは コチラ。

『二軍男子が恋バナはじめました。』(原書房/1200円+税)
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